2025年9月、残暑厳しい福岡県北九州市。
単なる週末の思い付きと勢いだけで福岡に来てしまった。
社会人になってから、体が平日に受けている抑圧を週末に何とか発散せねば、という観念に駆られて飛行機に飛び乗ることがままある。
JALのスカイメイトという激安運賃システム(当日予約限定で25歳までが安く航空券を購入できる。JALカードを持っているとさらに安くなる。)の存在も、空へ飛び発とうとする私の背中を強く押している。
スカイメイトはその仕組み上、当日で座席数に余裕がある便しか購入することができない。そのためいくら乗りたい路線でも、座席の状況次第でスカイメイト運賃の設定がなく購入不可、という状況が頻発するのだ。
週末スカイメイトでどこか行きたいが、空いている便がない……
そんなときに一つの選択肢として降りてくるのが、北九州空港だ。
ただの体感の話でしかないが、他の路線がだいたい満席という場面でも、北九州空港は空いている。気がする。
みんなが福岡空港を利用するからなのか、アクセスが不便だからなのか、理由は私にはわからないが、とにかくスカイメイトを確保しやすいのが北九州空港だ。
ただ、急に北九州行って何をしたらいいの?と思う方もいるだろう。
ということで目的地の選択肢の一つとして、今回は意外と知られていない北九州の離島のひとつ、馬島を紹介したい。
大都会・小倉と2つの離島
北九州の中心、小倉駅から歩いて10分ほどにある小倉港。
ここから定期船に乗ると、藍島、馬島という2つの島へ行くことができる。

今回乗船するこくら丸。
カラーリングがおしゃれでかわいらしい船だ。


乗船券を購入して桟橋へ。
今回は友人との島行だったため、ペアで安くなるチケットを購入できた。
ペア券1400円で一人700円。
往復でこの価格なので、かなり気楽に島へ行ける切符だと思う。



乗船。
船体に書いてある通り、航路は小倉港から馬島を経由し藍島へ至るルートになる。
便数は一日3往復(夏季の土日は4往復)。
うまく時間を見計らえば、馬島と藍島を一気に制覇することもぜんぜん可能だ。
今回は時間の都合上、訪れるのは馬島だけ。

船が岸を離れた。
小倉港の目の前には東横インをはじめとした巨大なビルたちが並ぶ。
ここから馬島まではわずか25分ほどの短い船旅になる。大都会からすぐに行ける離島、というのが個人的には好物なので嬉しい。
海を渡ることで一気に別世界へ行く感じが好きなのだ。




激しくしぶきを上げて海上を進むこくら丸。
思ったより揺れる。
甲板からは小倉のビル群や北九州の巨大な工業地帯を眺めることができて楽しい。
この日は風が強く、船が巻き上げる潮のしぶきと相まって髪がめちゃくちゃになるが、それもまたいいもの。




海上を猛烈に進んでいくこくら丸。
小倉のビル群が遠のき、あっという間に馬島が近づいてくる。
馬島へ到着


ということで馬島に到着。あっという間の25分だった。


船は私と友人、そして住民らしき乗客の計3名を降ろしてすぐに去っていった。
他に乗り合わせていた人々はみな藍島行きらしい。
島へ届けられた荷物は桟橋のベンチに安置され、しん、とした港。
実に島らしいおおらかさだ。いいね。


港を少し歩いてみると、とにかく静か。
ここ馬島の人口は30人足らず。商店もないような小さな離島だ。
港にはずらりと並べられた壺。
馬島ではタコ漁が行われており、そのためのタコ壺らしい。


島の入り口には漁協があり、壁には船の就航場所を知らせる張り紙がある。
浮桟橋ではなく、もっと内側に着岸することもあるのだろう。


馬島港に並ぶ漁船たち。
番号と船名が手書きされているものもちらほらとある。

今から漁へ出ていく船も。
この日はすごく暑い一日で、港をゆっくりと歩いているだけでだらだらと汗をかき、日光に体力を奪われていく。
しかも馬島には特に休める建物がない。(小さな待合室はあるが、エアコンがない)これがかなりつらい。


沖へ出ていく漁船を見送った後は、休めそうな日陰を探して足を進める。
島の集落は港の目の前だ。
集落を歩く


建物の日陰で休む猫たちを発見。
この場所では3匹ほどを見かけた。
しばらく観察していると、近所の方が猫たちに餌を与えにやって来た。
その方の話では昔は島にもっとたくさんの猫がいたが、去勢手術され今はずいぶん減ったらしい。
日本全国に猫島と呼ばれる島は点在するが、どこも単純に楽しい猫の島、というわけではない。実際は暮らしている島民の負担や、猫目当てにやって来る観光客など、さまざまな要因で問題が起こっている。
ここの猫たちも今はずいぶん少なくなってしまったようだが、最後まで幸せに暮らしてほしい。

猫のいる路地を抜けると、島唯一の神社へたどり着く。
大山祇神社だ。

酷暑の中であっても、神社の木陰に入ると空気が一気にひんやりとする。
単純な日陰の涼しさ以上に、境内の清らかさがそう感じさせるのかもしれない。
とにかく快適だ。ありがたい。

鳥居に木漏れ日が差している。
本殿の写真を撮り忘れたが、階段の上には立派なお社がある。
涼しい境内で一休みして、一息つくことができた。

休憩を終えて島内散策を再開。
小さな集落を軽く見て回る。
ちなみに、この島の車にはナンバープレートがない。
後から調べてみると藍島も同様らしい。島全体が私道なんだろうか。



歩いてみるとやはり島自体が相当に小規模なのがよくわかる。
集落だけだとあっという間に歩き終わってしまう感じだ。
ということで地図を確認。
集落の西側にあるらしい、海岸を目指すことに。


道中の畑はなんの作物が育てられているのかわからなかったが、後から調べてみると馬島はわけぎが名産らしい。
ということなので、おそらくこれはわけぎ畑でしょう。
間違っていたらごめんなさい。
馬島の海岸を歩く

数分歩くと、道の先に海が見えた。

馬島の海岸へ到着。
手前には砂浜が、少し奥には岩場が広がる。



ごつごつとした岩場を歩くと、ざざざとたくさんのフナムシたちが避けていく。
なんだか妙に大きな個体もいて、少しうおお……と戦々恐々してしまった。
足を取られないように気を付けて岩場を歩く。
ぼこぼこと穴が開いていて、たくさんの潮だまりがある。ぱっと見た感じ溶岩質な感じだ。
岸壁や積みあがった岩もなんだか面白い質感をしている。

海の向こうには北九州の工業地帯がうっすらと見える。
こんなに静かな島でも、住所は北九州市小倉北区だ。
日なたにいるとしんどいので、少しでも落ち着きをもとめて日陰へ。
汗が引いてくれないと、なかなか歩く気にもならない。

残暑の熱気に満ちた空。
もったりとした空気に少し息苦しさを感じる。
最近の夏はピークで存分に凶悪な暑さを発揮した後、その勢いを全く殺さずに残暑という名の夏パート2に突入している気がする。
爽やかだった日本の夏はどこに行っちゃったんだ。
もっと気持ちよく汗をかきたいよ。

なんて自然に恨み言を言ってもしかたがない。
少しでも涼しそうな道を通って港へ戻ることにした。
今回は行かなかったが、どうやら北側の海岸なんかも行けるらしい。
そちら側は、すぐ向かいに山口県の六連島が見えるようだ。六連島は灯台で有名な下関の島で、訪問を試みたが運休で悔しい思いをした記憶がある。
山口県も魅力的な島が多い。萩の見島や周防大島、その周りの小さな島々……
そのあたりもいずれまた。



港に帰ってきた。
今回はごく短い時間の滞在だったが、もう少し涼しい季節になったらもっとのんびりと海岸をぐるっと歩いてみるのも面白そうだ。
その頃には島の猫たちももう少し活発に遊んでくれるかもしれない。



最後に写真を撮影し島時間の終わりを待っていると、沖から迎えの船がやって来た。


てきぱきと進められる係留作業。
もたもたしている時間はなさそうなので、急いで桟橋へ向かう。
写真を撮っていて乗り過ごす、なんてことがあっては洒落にならない。
この便が小倉行き本日の最終だ。
実際のところ、乗り過ごしたらどんな処遇になるんだろうか?
島には宿も当然ないし、覚悟を決めて一晩過ごすことになるんだろうか。


最終便・小倉行き
無事間に合ったので、最後に桟橋からの景色を見納めて乗船。
小倉へ帰ろう。



出航すると、爆速で海面を駆け抜けていく船。
船の後尾では猛烈なしぶきが上がり、揺れも相まってアトラクションのようだ。
それに夢中な子供たち。



帰りの船には、行きと比べてもそれなりの人数が乗っていた。
馬島から乗ったのは自分と友人含め3名だけだったので、そのほとんどは藍島帰りの人々になる。
大学生の集団らしき乗客もいたし、馬島とはうってかわって、藍島はお出かけスポットとしてそれなりに人気があるようだ。
近いうちに訪れて写真記にさせていただきます。



さて、夢中で写真を撮っている間に船は小倉港へ入港。
大都会からわずか25分、それでもその先には静かな北九州の島が確かにあった。
何かを求めていくのではなく、ただそこにある島と暮らしを見て一息つく。
たどり着いた島で腰を据え、水平線の向こうの工場群とにらめっこするような休日もきっと楽しいはずだ。飽きたら猫もいるし。
そんな旅ができる馬島、ぜひみなさんも足を伸ばしてみては。

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